【はじめに】
コバ処理を行うにあたり知っておくべき革に関連する用語があります。
まず「コバ(コバ処理)」
そしてもう一つが「鞣し」です。
簡単に言うと、鞣しとは”皮”が”革”へと生まれかわること。
「皮」とは、ここでは動物や魚類の皮のことを指します。
それらの「皮」を後述する方法で鞣すと「革」へと生まれかわります。
その鞣しは、大きく分けると2つの方法に分けることができます。
ここではその2大鞣し方法と、2大鞣し方法の利点を組み合わせた新たな鞣し方法について解説してゆきます。
コバ処理を行う際に、切っても切り離せない「鞣し」という用語への理解を深めましょう。
なぜなら、鞣しの方法の違いによりコバ処理の方法も変わるからです。
鞣しを理解することは、そのままコバ処理の方法(手順)への理解を深めることにもつながります。
鞣しとは~皮が革へ生まれかわる時
鞣し方法 【タンニン鞣し】
まず一つ目の鞣し方法は、タンニン鞣しです。
手持ちのタンニン鞣し革をご紹介いたします。


一番古くからある鞣し方法であるタンニン鞣しは、草や木・いわゆる植物の中に含まれるタンニン(渋成分)と革に含まれるコラーゲン(たんぱく質)を結合させることで皮を鞣す方法です。
なお、主に使用されているタンニンエキスは下記の通りです。
・南アフリカ産 ミモザ ワットルエキス
・南米産 ケブラチョ ケブラチョエキス
・ヨーロッパ産 チェスナット チェスナットエキス
タンニン鞣しは、これらのタンニンエキスに皮を浸ける込む方法で行われます。
そのタンニンエキスに浸け込む方法は主に2種類あります。
【ピットなめし】
タンニン濃度(成分)の異なる槽に順番に浸け込んでいく方法です。
ロッカー槽 → レイヤー槽 → ホットピット槽と順に皮を浸けこんで鞣しを進めていきます。
次に、漂白 → 加脂 → セッチングアウト(伸ばし) → 引油 → 乾燥 → 味取り → ロール掛けという工程で仕上げられます。
【ドラムなめし】
タンニン槽の変わりにドラムを用いて鞣す方法です。
例えは悪いかもしれませんが、ドラム型洗濯機で洗濯される洗濯物が皮に代わったと考えていただければイメージしやすいと思います。
タンニン槽に”浸け込む” ピットなめしに比べ、”回転する”ドラムにタンニンエキスと共に皮を投入するドラムなめしは、鞣しにかかる時間をピットなめしよりも短くできるという利点があります。
鞣し方法 【クロム鞣し】
もう一つの代表的な鞣し方法は、クロム鞣しです。


現在流通している革の約80%は、このクロム鞣し革です。
塩基性硫酸クロム塩などの化学薬品をなめし剤として使用する方法で、先程のドラムなめしと同じ様に巨大なドラム型洗濯機の中に皮を入れ、回しながらなめし剤を徐々に浸透させていく方法となります。
クロム鞣し革は、軽くしなやかで伸縮性が高いという特徴を持ちます。
タンニン鞣し革に比べ経年変化しにくく、味わいを増すという楽しみは薄いかもしれません。
一方で、タンニン鞣しに比べ鮮やかな色味が出しやすく、その表面(銀面)は傷が付きにくい傾向にあります。
カラーバリエーションが豊富で、明るいポップな色味に仕上げられることから、衣類・カバン・靴などに使用されることが多い革です。
鞣し方法 【コンビ鞣し】
タンニン鞣しとクロム鞣しの2大鞣し方法。
その鞣し技術の優れたところを合わせてしまおうと言うのが、このコンビ鞣しという鞣し方法です。


一般的にこの鞣し方法は、タンニン鞣しの良さである経年変化も味わえ、さらにクロム鞣しの優れた特徴である発色の良さ・傷の付きにくさ等を兼ね備えていると言われます。
しかし実際は、純粋なタンニン鞣し革や純粋なクロム鞣しの優れた革の性質・特徴部分を100%引き出せているかというと少し物足りない感じもいたします。
違う日にコンビ鞣し革のコバ処理を行った際も、タンニン鞣し革のような光沢が出るまで磨き込むことは難しいと感じました。
使用したコンビ鞣し革の鞣し方法で差が出てくるとは思いますが、コンビ鞣し革は、ややクロム鞣し革よりの特徴を持っているように感じます。
【まとめ】
革の鞣しは、その鞣しを行うタンナーにより様々な個性があります。
タンナーとは、皮を革へと加工する仕事に従事している方や会社のことを指します。
動物や魚類の皮を、鞣すことでその後何年も使用できる革にする。
奥が深く、また尊いお仕事であります。
「鞣し」というのは、人類が昔から行ってきたものです。
そこには、命(肉)をいただいた後の皮を無駄にしないための創意工夫が込められているのであります。